東京大学の授業料値上げを考える
東京大学が、現行授業料の約2割アップを検討している。
国立大学の標準授業料は、現在年額535,800円となっている。文部科学省が定める省令によると、この標準額を最大120%まで引き上げられる。最大限の120%引き上げると、年額は642,960円となる。約10万円の値上げとなる。
あらゆる角度から日本のトップ大学と位置づけられる東京大学での動きであるから、マスコミは一大ニュースであるがごとく取り上げているようである。
しかし同じ国立大学の中でも一橋大学や千葉大学は、すでに標準額を超える年間授業料を設定している。東京大学同様に、学生をはじめとする学内外からの反対はあっただろうに、ニュースで大きく取り上げられた記憶はない。
私学のトップ校の一つ、慶応大学の総長は、国立大学の授業料を年額150万円にしてはとの発言をして話題になっている。同大学の授業料は、学部にもよるが、初年度の納付金が約140万円、2年時以降が約120万円になっている。同総長の発言は、「公平な競争」を求めることが根底にある。
世界のトップ大学の一つ、アメリカのハーバード大学はどうか。年間授業料はUS$56,550(1ドル150円換算で約840万円)。私学のトップ校のケースである。公立の教育機関である州立大学の場合はどうか。カリフォルニア大学ロスアンゼルス校(UCLA)は、納税者である州民の場合は、US$15,154(約227万円)、留学生をはじめとする州外からの場合は、US$34,200(約513万円)となっている。公立大学でも、これだけの授業料を取る。それでも、世界中から応募者がさっとうするのは何故か。また納税者である州民でも年額200万円以上の授業料を納める。我国の国立大学の約4倍だ。
弊社代表は、1990年代の後半から2000年代の前半に、文部科学省の担当官に調査・情報の開示を求めたことがある。求めた調査・情報の開示は、「国立大学に在籍する学部生一人の教育に、国はどれ程の予算が必要なのか?」
文部科学省担当官の当初の回答は、「正確には出せない」であった。ごもっともである。弊社の問いは、学部生一人にかかる教育費。つまりそれ以外の予算は除くことになる。
授業料の値上げを検討している東京大学には、数多くの大学院の学部・学科があり、多くの大学院生が在籍している。また地震研究所、大気海洋研究所、宇宙線研究所など、無数の付属研究所、研究センターなどを設置している。これらの予算をすべて除くことを求めた。
しばらくして、文部科学省の担当官から連絡があった。「あくまでも概算」と断りながらも出してきた予算額は、「国は、国立大学に通う学部生一人に、年間約250万円を使っています。」20年以上も前のことである。今もこの額であるとは考えにくい。
国立大学の授業料はどうあるべきでしょうか?